半経験的分子軌道法
Hartree-Fock方程式を解く点においてはab initio法と大きな違いはありません。 分子軌道を完全に解くのではなく、一部を、実験値に基づいたパラメータで置き換えるなどして、計算をより単純にした計算方法です。一部実験値を利用してすることから半経験的分子軌道法(semiempirical molecular orbital calculation)と呼ばれます。 半経験法はじめ分子軌道計算では結合の概念がなくなります。入力ファイルに結合情報を入力するところがありません。しかし、原子の座標と分子全体の電荷が合ってい無ければ計算はエラー・終了します。 近似方法等が研究され様々な方法が開発されています。有機分子の計算では、ヒュッケル法、拡張ヒュッケル法、CNDO (Complete Neglect of Differential Overlap)法、INDO (Intermediate Neglect of Differential Overlap)法, MINDO (Modified Intermediate Neglect of Differential Overlap)法, AM1 (Austin Model 1), PM3 (Parametric Method 3)などがよく知られています。 最近StewartらによってAM1を改良したRM1(Recife Model 1)が発表されました。この手法はAM!やPM3に比べ、結合長、生成熱、双極性モーメント及び、イオン化ポテンシャルにおいて再現性が高いといわれています。結合角の再現性は両者に比べほんのわずかに劣るそうです。原子座標とエネルギーとを関数化したという意味からこれらをハミルトニアン(演算子の意)と呼びます。改良が加えられるに従い、計算の精度は高くなりました。 半経験法ではab initio法に比べ計算時間は短縮されますが、パラメータを用いているため、適応する原子以外を含む分子は計算できません。また、パラメータ構築時に考慮されなかった性質を含む分子を計算することは出来ません。たとえば、MNDOを用いてニトロベンゼンを計算した場合、ニトロ基がベンゼン環に直交してしまいます。MOPACでは分子力場を考慮するパラメータ"MMOK"を追加する必要があります。 SpartanにはAM1、PM3, MNDOが搭載されています。Spartan06からRM1も搭載されました。 |